ショパンノクターン全曲解説動画付き-優美で美しい旋律が魅力の曲集
ノクターンという形式の曲は、ジョンフィールドという人が最も最初に 創作したといわれています。
左手の簡素な伴奏をベースとして、優美で美しい旋律を右手で演奏する のが大きな特徴となっています。
ショパンのノクターンも初期作品はジョンフィールドの作品の影響を受けていますが、 次第にショパン独自の曲想へと変化していっています。
またショパンのノクターンはパリのサロン音楽として作曲されたものが 多いのも大きな特徴となっています。
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Contents
- 1 ショパンノクターン全曲解説
- 1.1 ショパンノクターン1番 OP.9-1
- 1.2 ショパンノクターン2番 OP.9-2
- 1.3 ショパンノクターン3番 OP.9-3
- 1.4 ショパンノクターン4番 OP.15-1
- 1.5 ショパンノクターン5番 OP.15-2
- 1.6 ショパンノクターン6番 OP.15-3
- 1.7 ショパンノクターン7番 OP.27-1
- 1.8 ショパンノクターン8番 OP.27-2
- 1.9 ショパンノクターン9番 OP.32-1
- 1.10 ショパンノクターン10番 OP.32-2
- 1.11 ショパンノクターン11番 OP.37-1
- 1.12 ショパンノクターン12番 OP.37-2
- 1.13 ショパンノクターン13番 OP.48-1
- 1.14 ショパンノクターン14番 OP.48-2
- 1.15 ショパンノクターン15番 OP.55-1
- 1.16 ショパンノクターン16番 OP.55-2
- 1.17 ショパンノクターン17番 OP.62-1
- 1.18 ショパンノクターン18番 OP.62-2
- 1.19 ショパンノクターン19番 OP.72-1
- 1.20 ショパンノクターン20番遺作
- 1.21 ショパンノクターン21番遺作
- 2 まとめ
ショパンノクターン全曲解説
ショパンノクターン1番 OP.9-1
ショパンが1831年に作曲した夜想曲です。
OP.9は、ショパンが最初に出版したノクターンとして記念すべき 作品となります。
右手にゆったりとした主題が現れ、左手はの伴奏音形となっています。
第61~64小節あたりには、右手に三度と六度で演奏するパッセージが でてきて、若干初心者には困難に感じるかもしれません。
エチュードのOP25-6やOP25-8で訓練してきた人にとっては難なく クリアできる箇所だと思います。
曲の最後のフォルテッシュモの箇所は、突如 感情が爆発したかの如く、高音部から少しづつ下って行って、 不協和音で幕を閉じます。
全体的に装飾的にして流麗なパッセージが印象的です。
ショパンノクターン2番 OP.9-2
ショパンのノクターンの中で最も知名度の高い曲の内の一つ です。
ピアノで演奏するのが主流ですが、ヴァイオリン、チェロなどの 編曲版としても世界中で頻繁に演奏されています。
もともとノクターンという標題は、アイルランド生まれのジョンフィールド創始者なのですが、その影響を受けて作ったショパンのノクターンの 方がすっかり有名になってしまったというのが現実です。
この曲がその典型例でしょう。
ちなみに映画「愛情物語」でこの曲がバックミュージックとして 使われて人気が大爆発しました。
曲目についてですが、全体を通じて、伴奏である左手の旋律は一貫して同じ動作を継続し、右手で主旋律が歌われるという形式になっています。
ショパンのノクターンの中では弾きやすい部類の曲ですが、 やや和声が複雑であるので、完全暗譜をして演奏するとなると 若干時間がかかることが予想されます。
ショパン初心者の方はチャレンジしてみるべき曲でしょう。
ショパンノクターン3番 OP.9-3
ショパンノクターンのOP.9の中では、あまり知られていない曲でしょう。
ショパンのノクターンの中でも珍しく、アレグレットAllegrettoというテンポの指示があったり、Scherzandoという「戯れた感じで」演奏することを指示する箇所が見受けられます。
前半は緩やかな旋律が続きますが、中間部で、不安定感を感じさせるようなパッセージが突然やってきます。
そしてコーダの美しさとても絶品、両手のゆったりとしたアルペジオで曲が無事終了します。
演奏の難易度については、1番、2番に比べると難易度が高めとなりますので ノクターンの演奏に慣れた頃にチャレンジすると良いでしょう。
ショパンノクターン4番 OP.15-1
このノクターンは1831年に作曲された曲で、 ショパンのノクターンによくありがちな三部形式で構成された 曲です。
前半は田園風の曲想ですが、con fuocoという指示の中間部で突然 激しいパッセージが登場します。
田園風の平和な雰囲気を一気にぶった切る荒々しい竜巻が 襲ってくるかのような箇所が登場します。
また後半には主題が戻ってきて、ゆったりと曲が終わります。
緩やかな主題と中間部の激しさというコントラストが魅力の曲ですが、 バラード2番にも類似点が見受けられます。
演奏については、中間部の箇所がやや難易度が高いかもしれませんが、 右手の演奏パターンはほぼ同じことの繰り返しなので、慣れてしまえば クリアできると思います。
ショパンノクターン5番 OP.15-2
ショパンのノクターンの中では2番に次いで有名で、 結構演奏される機会が多い曲です。
ノクターンによくある三部形式です。
中間部はオクターヴのメロディーを主旋律としつつ、 装飾音が付されている箇所が登場します。
主旋律を際立たせておきながら装飾音をキチンと演奏する 必要があり、演奏困難なパッセージとなるでしょう。
プレリュード8番やエチュードOP.25-1にも似たような箇所が出てきます。
中間部が終わると、また主題が登場し、甘美な夢を見ているかのような 状態で曲が膜を閉じます。
ショパンノクターン6番 OP.15-3
1833年に作曲されたノクターンです。
OP.15のノクターンの中では、もっとも目立たない曲では ないでしょうか? 歌唱的な旋律と中間部のコラール風のパッセージで構成されて います。
演奏難易度は優しい部類に入るので初心者向きと言えますが、積極的に この曲を演奏したいという人はあまりいないような気がします。
むしろノクターン2番を先に取り組んだほうが個人的には 良いと思います。
ショパンノクターン7番 OP.27-1
1835年に作曲されたノクターンです。
このノクターンは出だしから他に類を見ないほどの陰鬱な雰囲気を 醸し出しています。
陰鬱な左手の伴奏の上に、とても不安な気分にさせられる 右手の主旋律がとても印象的です。
中間部は尋常でない程の激しい旋律が歌われ、 まるでベートーベン風です。
ここは、左手がかなり広範囲を飛び回るため、演奏技術が困難と なる箇所です。
上級者に取り組んでほしい曲です。
ちなみにポリーニはこの曲がお気に入りのようで、 演奏会ではアンコールでこの曲を良く取り上げていました。
ノクターンという標題がついていますが、むしろレクイエムという 標題のほうがふさわしいと思える一曲で ショパンの中でも最高傑作に数えられる曲だと思います。
ショパンノクターン8番 OP.27-2
前曲の7番のノクターンとは対照的で、とても甘美で ホッとする一曲です。
なんとなくバイオリンの名曲のタイスの瞑想に似ていると 思ったのは私だけではないと思います。
曲想は、後半に行くにつれて演奏技巧が派手になっていきます。
特に曲の一番最後のパッセージは、天国をいざなう階段を上り詰めるかのようなとても晴れやかな気分にさせてくれる箇所であり、必聴です。
曲の難易度についてですが、右手は六度の技術が必要であり、初心者には結構厄介かもしれません。
ノクターン2番や5番同様、ノクターンの中でも 非常に人気の高い曲ですので、中級者以上の人は是非ともチャレンジしてほしい曲です。
ショパンノクターン9番 OP.32-1
1836年から1937年にかけて作曲されたノクターンです。
夢見るようなとても美しい一曲なのですが、 多くのノクターンでありがちな三部形式をとっていない 珍しい形式になっているのが特徴といえます。
特にこの曲の特徴的な箇所は曲の最後の箇所で、 フェルマータの挿入によって、一瞬の休止が生み出され、 緊張感が生み出されるところは見逃せません。
ちなみに バラード1番の出だしの部分となんとなく雰囲気が似ていますが 長調の曲が短調で終了する珍しいパターンになっているところはショパンが一工夫を凝らしたと 察しています。
ショパンノクターン10番 OP.32-2
とても珍しい序奏で始まり、9番のノクターンをうって変って、とても楽しげな曲です。
中間部は主題とは対照的に、短調の旋律が開始され、 情熱的な高まりを見せています。
この箇所では装飾音が連続して出現しますので、 きちんと練習をして、演奏パターンに慣れてしまいましょう。
ここの箇所をクリアすれば、この曲は初心者であっても演奏することは 十分可能ですので 是非ともチャレンジして下さい。
ショパンノクターン11番 OP.37-1
このノクターンは、1838年から39年にかけて作曲された曲です。
曲全体を通して瞑想的な曲で 中間部はノクターン6番のようなコラール風のパッセージが流れます。
この曲も、ノクターンの中では、地味で、目立たない曲では ないでしょうか?
ショパンノクターン12番 OP.37-2
舟歌を連想させるようなパッセージが繰り返される曲です。
当時ショパンはジョルジュサンドと恋仲にあったようで、 マヨルカ島への船旅の前後に作曲されたことが影響している のかもしれません。
演奏については3度や6度のパッセージが右手の主題に 出現するため演奏困難です。
エチュードのOP.25-6、25-8で徹底的に練習した人であれば 難なくクリアできると思いますが、そうでない人は 苦戦を強いられる曲ですので 上級者は是非チャレンジしましょう。
ショパンノクターン13番 OP.48-1
1841年に作曲されたノクターンです。
従来のノクターンとは違い、非常に大規模かつ情熱的な曲です。
重苦しい和音に乗せて悲しげな主旋律で曲はスタートします。
中間部は一瞬平和で静かなコラール風のパッセージが出現し、 聴く者は恍惚状態に陥るでしょう。
その直後にダイナミックなオクターヴの連続が出てきて また主題が再現します。
この主題は3連符の分厚い左手の和音に乗って歌われ、 なんだかショパンの心臓の鼓動を表現しているかのような 印象を受けます。
まさに最高傑作の一つとして数え上げられる曲です。
ちなみにこの曲はショパンコンクールでも頻繁に演奏されている曲です。
この曲はいくら傑作といえども、コンクール会場で連発して この曲を聴かされるとなると、審査員や聴衆にとっては、さぞかし 苦痛なのではないでしょうか・・といえるほどの人気ぶりです。
あまり演奏されまくると、希少価値が下落してしまいそうで とても残念です。
コンクールでは課題曲からこの曲を外した方が良いのではないか と個人的には思っています。
ショパンノクターン14番 OP.48-2
13番のテーマが「情熱」であったのであれば、 14番のテーマは「哀愁」というのがふさわしいのではないでしょうか?
主題は悲しげなセレナード風の旋律です。
この曲は、中間部の 5連符と6連符によって表現されるパッセージがでてきたり、 左手の演奏が完全にストップして右手だけで 演奏される箇所があったりと、他のノクターンには 出てこなかったようなパッセージが出てくるなど特徴的な 箇所が多い曲です。
曲の終盤では、舟歌を連想させるような右手のトリルのパッセージが 続き、最後は高音部に駆け上がって長調で静かに幕を閉じます。
ショパンノクターン15番 OP.55-1
ノクターン13番風の重苦しい曲想でスタートします。
曲の中間部では、せかせかと緊迫感が沸き上がり、 次第に高揚していきます。
この曲の聞かせどころとなる重要な箇所です。
最後は主題の重苦しさとは裏腹に、鍵盤の高音部でキラキラと煌びやかな パッセージで幕を閉じます。
演奏難易度に関してはそれほど困難ではなく ノクターン2番や5番当たりが演奏できれば十分に演奏することが 可能な曲ですので 初心者の方でもチャレンジしてみる価値はありそうです。
ショパンノクターン16番 OP.55-2
ショパンの曲の中でも、晩年の円熟期の作品に該当します。
厳格な形式にとらわれることなく即興的な曲想です。
ブラームスの後期作品となんとなく雰囲気が似ている部分があり、 静寂感が曲全体に漂っています。
曲終盤にさしかかり、主題の旋律に新たな装飾音が加えられて 演奏される箇所は、とてつもなく切ない気分にさせられます。
左手はかなり広範囲にわたっての演奏技術が要求され、 演奏はかなり困難な部類に入ります。
ちなみにショパンコンクール7回では、この曲が コンクールの課題曲の一つでした。
そのときのマルタアルゲリッチの演奏を聴いたのですが、 かなりハイテンポでの演奏とはいえ名演にふさわしい パフォーマンスでした。
ショパンノクターン17番 OP.62-1
1846年に作曲されたノクターンです。
ノクターン2番や5番のような優美さや明るさは全く見られず、 テーマは静寂感と孤独感であるように思えてはならない曲です。
とくに印象できなのは中間部で、過去を懐かしむかのような旋律が歌われます。
なんとなくこの箇所はプレリュードOP.45を思い出してしまうのは 私だけではないはずです。
中間部が終了すると、トリルの連続の演奏技法が 駆使された主題が再現します。
楽しかった過去への思いでに耽っている中、突如孤独な現実を 付きつけられるかのような残酷さすら感じます。
この箇所は美しさの極みともいえ演奏者の腕の見せ所です。
演奏技術はかなり困難な部類に入りますが、是非とも チャレンジしていただきたい傑作です。
ショパンノクターン18番 OP.62-2
1846年に作曲されたノクターンです。
この曲も晩年の作品ではありますが。直近の作品であるノクターン16番、17番のような静寂感や孤独感は感じられません。
むしろ優美ささえ感じます。
中間部では、哀愁に満ちたパッセージが現れます。
そして再び主題に戻るという典型的な3部形式の曲ですが、 前期の作品と比べては、圧倒的に独創性が加わった作品と なっています。
演奏会で、単独でこの曲を演奏する人はあまりいないというのが 残念ですが、上記動画のようにショパンコンクール10回の優勝者であるダンタイソンの 演奏がとても素晴らしかったです。
ショパンノクターン19番 OP.72-1
このノクターンは1827年に作曲され、当時ショパンはまだ 17歳という若さでした。
ノクターン19番となっていますが、実は、ノクターンの中で 最も最初に作曲された作品です。
ちなみに葬送行進曲OP.72-2や3つのエコセーズOP.72-3と セットで出版された曲といわれています。
全体的に哀愁に満ちた旋律で、円熟期のような奥深さは感じられませんが、17才という年齢で作曲しているというのには驚かされます。
ショパンノクターン20番遺作
戦場のピアニストという映画の主題曲になったのがこの曲で Lento con gran espressione(レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ)というタイトルでそのまま呼ばれることもあります。
当時のショパンはある女性に片思いをしており、 その心境がこの曲に反映されているように思えます。
ショパンのピアノ協奏曲第2番の作曲のきっかけになる曲ともいわれ、 ショパンのピアノ協奏曲第2番の3楽章の旋律にとても 似ていることに気がつくと思います。
とてもヒステリックで、悲しすぎる傑作です。
ちなみに難易度は中級程度ですので、ノクターン2番や5番に取り組んだ方は 十分に演奏できる水準です。
全音のピアノピースでも格安で購入できますので、是非とも 演奏してみて下さい。
ショパンノクターン21番遺作
このショパンのショパンノクターン21番は ショパンの没後1938年に出版されるまで知られていなかった 曲です。
どうやら20世紀に入ってから発見されたようです。
曲の内容に関しては、傑作という部類とは言い難いため ほとんど演奏されることはありません。
またノクターンの楽譜や録音のなかにも、この曲が 入っていないというケースが多いです。
ちなみにあるバレエコンクールで使われていたというのは とても意外でした。
もう少し演奏される機会があると良いですね!
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まとめ
以上がショパンノクターン全曲解説でした。
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